大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(う)2487号 判決

被告人 澤田義之

〔抄 録〕

所論は、審理不尽、事実誤認及び量刑不当を主張するものであるが、所論に対する検討に先立ち、職権をもって調査するに、原審記録によると、検察官は、昭和五四年五月三一日付、同年六月三〇日付、同年八月二七日付、同月二九日付各起訴状をもって、被告人が、昭和五三年九月九日ころから昭和五四年三月七日ころまでの間、前後八九回にわたり、株式会社花菱の社長比留間敏明から金融資金名下に、現金合計二五一九万円を騙取した、として起訴し、これを受けた原審は、これらを併合審理して原判決をしたのであるが、右各起訴状記載の公訴事実と原判決が認定判示した罪となるべき事実とを対比すると、(1)原判決が認定した(罪となるべき事実)のうち、別表番号20の「昭和五三年一〇月一九日ころ、現金四〇万円を騙取した」との事実は、右各起訴状記載の公訴事実のどこにも見あたらないのみならず、(2)昭和五四年六月三〇日付起訴状記載の公訴事実中別表番号5の「昭和五三年一〇月一〇日ころ、現金四〇万円を騙取した」との事実は、原判決の(罪となるべき事実)のどこにも認定判示されていないことが明らかであるところ、本件は、各犯行の都度一罪を構成するものとして起訴され、原判決もまた同様に認定していることのほか、右(1)、(2)の犯行時とされた昭和五三年一〇月中旬における犯行は、殆ど連日にわたるもの、すなわち、同月九日ころに四〇万円、同月一〇日ころに四〇万円、同月一一日ころに一五万円、同月一二日ころに三〇万円、同月一四日ころに三〇万円、同月一六日ころに三〇万円、同月一七日ころに四五万円、同月一八日ころに一〇万円、同月二一日ころに三五万円、同月二三日ころに二〇万円の各現金を騙取したもの、として起訴されていること、及び、被告人の欺罔手段は、いずれの場合でも、「お客から融資の申込があったので金を出してもらいたい」などいう類似のものであるとされていることにかんがみると、本件において、各罪の区別をする重要な要素は、各犯行日時の点にあると考えられるから、仮に、原判決が、右(2)で指摘した「昭和五三年一〇月一〇日ころに現金四〇万円を騙取した」との起訴事実を、右(1)で指摘したところの「昭和五三年一〇月一九日ころ現金四〇万円を騙取した」という事実に、犯行日時を変更して認定判示したものと解するとしても、これは、起訴された罪と異なる罪を認定したこととなり、到底許されないところといわなければならない。

(藤野 鬼塚 門馬)

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